LaTeXは便利ですがマークアップ言語のため,いろいろな命令を覚えておかなくてはなりませんし,入力するのも大変です.命令のスペルも間違えてしまうかもしれません.この繁雑な命令入力を手助けしてくれるのが, YaTeX(やてふ) です.
YaTeXはEmacsのメジャーモードです.Linuxなら,最初から入っている可能性が高いです. Windowsでは xyzzy と KaTeX を使うことで Emacs + YaTeX とだいたい同じことができるようです. YaTeXを使うことで,TeX文書の作成が格段に楽に,素早く,確実に行えるようになります.ここでは,YaTeXの使いかたを簡単に紹介します.
TeXで文書をつるく際,コンパイル,プレビュー,エラー箇所へのジャンプは頻繁に行います. YaTeXを使えば,操作をエディタから直接実行できます.便利なので,ぜひ覚えましょう. LaTeXコマンドは C-c t ではじまります. C-c とは,Ctrlキーを押しながらCキーを押すことです.つぎのコマンドが使えます.
コマンド | できること |
C-c t j | platex起動(コンパイル) |
C-c t r | 領域を指定してコンパイル |
C-c t k | 動作中のコンパイルを中止 |
C-c t b | jbibtex起動 |
C-c t p | プレビューア(xdvi)起動 |
C-c t s | xdvi-remoteでのサーチ |
C-c ' | エラー行へジャンプ |
C-c t l | lprコマンド起動(プリントアウト) |
よく使うものについて,少し説明を加えます.
LaTeXソースを保存してコンソールに移り,platex foo.tex でコンパイルして… という作業は頻繁に行うので,これをエディタ(Emacs等)上で行えるとかなり楽になります.YaTeXでは,
C-c t j
と入力することで,エディタからコンパイルを行えます.この入力はCtrlキーを押しながらcキーを押して(Ctrlを離し),つぎにtキーを押して,最後にjキーを押すことを意味します.
コンパイルしたらプレビューア(LinuxではXdvi)を立ち上げて,作った文書を見ることになります. YaTeXではつぎのコマンドで,プレビューアの起動をエディタから行えます.
C-c t p
プレビューアは一度起動したら,あとはコンパイルの度に表示が自動更新されます.
LaTeXで文書を書く際,スペルミスなどのエラーはつきものです.
C-c + '
とタイプ('は [Shift] キーを押しながら [7] キーを押します)することによってエラー行へジャンプし,エラー箇所をすぐに見つけることができます.
\begin{...}ではじまり\end{...}で終わる環境の補完はbegin型補完とよばれます.これらは C-c b ではじまります.
頻繁に使われる環境は C-c b の後に一字入力するだけで即時補完されます.標準で以下のものが使えます.
begin型即時補完一覧
コマンド | できること |
C-c b d | document環境 |
C-c b E | equation環境 |
C-c b c | center環境 |
C-c b i | itemize環境 |
C-c b e | enumerate環境 |
C-c b D | desctiption環境 |
C-c b l | flushleft環境 |
C-c b m | minipage環境 |
C-c b t | tabbing環境 |
C-c b T | tabular環境 |
C-c b ^T | table環境 |
C-c b p | picture環境 |
C-c b q | quote環境 |
C-c b Q | quotation環境 |
C-c b r | flushright環境 |
C-c b v | verbatim環境 |
C-c b V | verse環境 |
たとえば,Emacs上で
C-c b E
のように「Crtlキーを押しながらCキー,Bキー,Shiftキーを押しながらEキー」とリズミカルにタイプすると,カーソルのあった場所に
\begin{equation} \end{equation}
が一瞬で挿入されるわけです.
即時補完に登録されていない環境でも, C-c + b + SPC の後に環境名を入力することで補完でき,登録もできます.登録した環境名は,環境の最初の文字をタイプしてTabを押すと補完されます.
今まで書いたテキストを,後から環境に入れたいなと思うこともあります.この場合,環境に入れたいテキストをマークし,上記の C-c b を C-c B に置き換えれば,マークした部分が環境で括られます.
数式環境中($ $ や \begin{equation} \end{equation} の中)でのみ動作する補完がギリシア文字補完,数学記号イメージ補完です.数式環境中で ; や : をタイプしようとして,ちょっと特殊な動作になったことはありませんか.これは,; や : がこれらの補完を開始する合図だからです.
数式環境中で
:a
とタイプすると,そこに \alpha が入力されます. \beta を入力したいときは :b とタイプします.このように,:(コロン)の後にアルファベットを入力すると,それに対応したギリシア文字が補完されます.
コロンそのものを入力するには,:: と2回続けてタイプします.
数学記号の入力も大変ですよね.これらは,;(セミコロン)の後に,数学記号の形から連想できるものを入力することで補完できます.たとえば,偏微分記号 ∂ は数字の 6 に似ています.数式環境中で, ;6
とタイプすれば,補完されて \partial が入力されます.つぎのようなものがあります.他にもたくさんあります. 入力 補完される命令 ;6 \partial ;h- \hbar ;t \dagger ;o \circ ;oo \infty ;-> \rightarrow ;--> \longrightarrow
また,形からの連想ではなく,頭文字で補完してくれるものもあります. 入力 補完される命令 ;f \frac ;s \sum ;r \sqrt ;i \int
などです.セミコロンそのものを入力するには, ;; と2回続けてタイプします.
ここで紹介したコマンドはごく一部です. YaTeXの機能は多いので,少しずつ覚えていくと良いと思います.